CHAPTER_06

夜の接続

Night Connection

324号室 / 医務室

深夜。ネオンの明滅が、神経を逆撫でするように部屋を照らす。
アーサーは天井を見つめていた。いつもの数字のカウントは、今夜は無意味に思えた。隣のベッドは空っぽ。新しいルームメイト――40%の増強率しかない少年――は、医務室で何時間も横たわっている。
まるでお姫様みたいに気絶しやがって。40%の増強で、初日でダウンか
壁に手を這わせる。回路の微細な振動が指先に伝わってきた。
OSCAR [DIGITAL]
君の思考、うるさいよ。
オスカー?
OSCAR [DIGITAL]
他に誰がいる? 君の当番ハイブリッドはメンテナンス中?
どうやって――
OSCAR [DIGITAL]
退屈だったんだ。医務室は死ぬほどつまらない。だから遊んでる。
遊ぶ?
OSCAR [DIGITAL]
扉をテストするんだ。夜の習慣さ。君は眠れない夜を数える。僕は電子の鍵を試す。でも今回は……今回は、開いてる扉を見つけた。大きく開いてる。コードもない、ロックもない。ただ……君だけ。
◆◆◆

明日の計画

ところで、明日の君の計画、自殺行為だな。
OSCAR [DIGITAL]
僕の計画? ケージに入るのは僕で、君じゃないよ。
分かってる。ケージをブロックして、排水を起動して、タイミングを見て解除? それが君の天才的アイデア? 最悪だ。
OSCAR [DIGITAL]
待って……どうして僕の計画を知ってるの?
君の思考が漏れてる。叫んでるみたいに大きく。

SYSTEM STATUS

CONNECTION: ESTABLISHED
SYNC_RATE: 87%
SECURITY: NONE
◆◆◆

水没の恐怖

OSCAR [DIGITAL]
怖いんだ、アーサー。クソ、恐怖してる。明日みんなの前で死んで、ただ記録されるだけ。"40%は24レベルに耐えられなかった。次"って。
アーサーは一気に身を起こし、ベッドの後ろの壁に手のひらを押し付けた。どこか遠く、廊下と階を隔てた医務室で、オスカーも同じジェスチャーをしているのを想像した。
死なせない。約束する。
OSCAR [DIGITAL]
君にそんなことは――
見てる。毎秒。何か問題が起きたら、俺が何とかする。いつもそうしてきた。
◆◆◆

透明な心

OSCAR [DIGITAL]
透明なんだ。君の精神、アーサー。仮面もない、感情のファイアウォールもない。全部見える:隠してる嵐、拒否してる繋がり。不安で、同時に安心する。だってこの偽物と増強だらけの複合施設で、君は本物だから。偶然に、人間的だ。
回路の熱が手のひらの下で強まった。ネットワークを通じた共有パルス。
君がここに、俺の頭の中にいる時……数を数えたくなくなる。こんなこと初めてだ。だから明日、君は死なない。交渉の余地はない。
◆◆◆

エピローグ

OSCAR [DIGITAL]
どういたしまして。良かったよ。君の心は透明だ、アーサー。透けて見える。不安で、同時に安心する。
なぜ安心?
OSCAR [DIGITAL]
隠すものがないってことだから。もしくは、何かを隠すべきだって知らない。どちらにしても……本物だってことだ。仮面と増強だらけのこの場所で、君は偶然に純粋だ。
接続がゆっくりと切れていく。
久しぶりに、数を数えたくない

第6章 終